カテゴリー: 土木鋼構造物診断士

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(10)

    (46)鋼鉄道橋の桁端部の横桁腹板切欠き部において想定されるき裂を下の写真に示す.このき裂の発生をあらかじめ防止する対策として,もっとも不適当なものはどれか.

    1) 切欠き部の切断加工で仕上がりの悪いもの, 溶接欠陥が残っているものをグラインダーで仕上げる.

    2) 主桁の下フランジを当て板により補強し,主桁のたわみを抑制する.

    3) 切欠き部を当て板で補強する.

    4) 沈下が生じていた沓座の損傷を補修する.

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    正解:2)

    1) 切欠き部の切断加工で仕上がりの悪いもの、溶接欠陥が残っているものをグラインダーで仕上げる。

    → 応力集中を減らす合理的な対策。妥当。

    2) 主桁の下フランジを当て板により補強し,主桁のたわみを抑制する。

    → 問題は「横桁腹板切欠き部のき裂」への対策。主桁下フランジ補強は直接関係が薄く、構造の応力流れにも不合理。不適当。

    3) 切欠き部を当て板で補強する。

    → 切欠き部の応力集中を低減する妥当な方法。

    4) 沈下が生じていた沓座の損傷を補修する。

    → 支承の不具合は局部に二次的応力を生じさせるため、補修は有効。

    (47)港湾構造物に適用される防食工法に関する a)~c) の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) 電気防食工法において用いられる流電陽極は,一般にアルミニウム合金製である.

    b) ベトロラタム被覆は,現地施工が可能であるが,施工後の養生に長期間を必要とする.

    c) ウレタンエラストマー被覆は, 鋼矢板の継手部のような複雑な形状の構造物にも適用が容易である.

    1) なし

    2) 1 つ

    3) 2 つ

    4) 3 つ

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    正解:1)

    a) 流電陽極材料は,鋼との電位差の大きい Mg またはその合金が主体であるが,環境によって Zn またはその合金,Al 合金等が用いられる場合もある.

    b) ペトロラタム被覆は,港湾鋼構造物の防食工法として有効な方法であり,実績も多い.この工法は,水中施工が可能であること,素地調整が比較的簡単でかつ施工後の養生期間も必要としないなどの特長がある.

    c) 工場の専用設備で被覆するウレタンエラストマー被覆では,安定した品質が得られる.さらに量産による低コスト化が図られることから,多くの適用実績がある.一方,現場施工が必要となる鋼矢板継手部などの複雑な構造には適用できないため,水中硬化型被覆などを行う必要がある.

    (48)港湾構造物の特徴に関する a)~d) の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) 港湾鋼構造物において集中腐食が生じた事例は,河口付近の場合が多い.

    b) 矢板式係船岸は, 鋼矢板と背後に設置した控え工をタイロッド等で連結した構造が一般

    的である.

    c) 鋼管杭式桟橋は,鋼管杭と上部工の接合部において曲げモーメントが最大となる.

    d) 矢板式係船岸の上部工は,塩害劣化が激しい.

    1) なし

    2) 1 つ

    3) 2 つ

    4) 3 つ

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    正解:4)

    • a) 河口付近は淡水と海水の混合、堆積物や酸素分布の変化により局所的な電位差が生じやすく、集中腐食(局部腐食)が起きやすい。
    • b) 矢板式係船岸は矢板と背後の控え工をタイロッド等で連結する形式が一般的で、記述は妥当。
    • c) 鋼管杭式桟橋での曲げモーメントの最大値は荷重条件や地盤条件に依存するが、必ずしも「杭と上部工の接合部で最大」とは限らず一般化できない(誤り)。
    • d) 矢板岸の上部工は塩害(塩分散布・飛沫)の影響を受けやすく劣化が進行しやすい。

    (49)内径 2,000mm,板厚 9mm の水圧鉄管において,円周方向応力が許容応力度 135N/mm2と等しくなる作用水頭として適当なものはどれか.

    1) 約 50m

    2) 約 75m

    3) 約 100m

    4) 約 125m

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    正解:4)

    (50)ダムゲートの振動に関する次の記述において, (A)から(D) に入る語句として,適当な組合せはどれか.

    扉体に疲労を生じるような振動として,特定の開度,一般に(A)放流時に生じる自励振動がある.自励振動は,底部のリップ部での(B) ,扉体底面版下での(C)などが原因となる.振動に対しては,設計段階でリップ部の形状の工夫,運用段階で(A)での(D)の放流を避けるといった配慮がなされる.

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    正解:1)

    • 自励振動は一般に微小開度で発生しやすい。
    • 発生原因としては,リップ部での流れの再付着や,扉体底面下での薄い水脈(薄い噴流)の振動などが知られている。
    • 対策としては,運用時にそのような開度で長時間放流することを避ける、という取り扱いが行われる。
  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(9)

    (41)鋼道路橋の疲労損傷に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) RC 床版を支持する縦桁では,横桁取合い部のウェブ切欠き部からき裂が発生することがある.

    2) 上路アーチ橋の垂直材では,クラウン部から離れた,長い垂直材の上下端部にき裂が多く発生することがある.

    3) 疲労損傷に対して補強を行った部位では,補強部材による剛性変化に伴い,近接する溶接部に新たなき裂が発生することがある.

    4) 鋼製橋脚では,沓座溶接部や隅角部にき裂が発生することがある.

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    正解:2)

    • 1) RC床版支持の縦桁では、横桁取合い部のウェブ切欠き(コープ)周りで歪み誘起(ねじり・面外変形)疲労が生じやすく、き裂事例が多い。→適当
    • 2) 上路アーチ橋の垂直材の疲労き裂は、一般にクラウン近傍の短い垂直材端や節点部での二次応力・面外変形の影響を受けやすい。設問の「クラウンから離れた長い垂直材の上下端に多発」は傾向と合致しない。→不適当
    • 3) 補強により局所剛性が変化すると、荷重再配分で近接溶接部に新たなき裂が生じることがある。→適当
    • 4) 鋼製橋脚では沓座溶接部や隅角部など応力集中箇所で疲労き裂が発生しやすい。→適当

    (42)鋼道路橋の損傷に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 桁端支点部で,沓座モルタルに損傷が生じている場合には,伸縮装置に段差がみられることがある.

    2) 支承の腐食により回転機能や移動機能が低下している場合には, ソールプレートの溶接部に疲労き裂が生じていることがある.

    3) 舗装に亀甲状のひび割れやポットホールが生じている場合には, 当該部位のコンクリー卜床版に損傷が進行していることがある.

    4) F11T や F13T の高力ボルトでは遅れ破壊が発生することがあるため,既に全ての橋梁で交換されている.

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    正解:4)

    F11T・F13T 等の高力ボルトに遅れ破壊(水素脆化など)が発生することはあり得ますが、「そのため既に全ての橋梁で交換されている」という断定は誤りです。実際にはリスク評価や優先度に応じて交換・点検・管理が行われており、すべての橋で一律に交換済みという状況にはないのが現実です。

    (43)コンクリート橋に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) PCT 桁橋の間詰め床版部は,陥没などの重大な損傷を生じることがある.

    2) PC 鋼材に沿ったひび割れがある場合は,詳細な調査が必要となる.

    3) ポータルラーメン橋は,耐震性の向上や維持管理の効率化を図ることができる.

    4) ひび割れに対する判定基準は RC 橋の方が PC 橋よりも厳しい.

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    正解:4)

    PC 橋はプレストレス鋼材や緊張力の維持が重要なため,ひび割れの影響が大きく、一般に PC 橋の方が許容ひび割れ幅などの判定基準は厳しい(厳格に管理される)です。したがって「RC の方が厳しい」とする記述は誤りです。

    (44)下の写真に示す道路橋 RC 床版の下面に生じた損傷に関する次の記述のうち,もっとも適当なものはどれか.

    1) 床版厚不足による曲げ破壊

    2) 鉄筋の腐食,膨張による剥離

    3) 施工継目部の角欠けの進行による剥離

    4) 輪荷重の繰返しによる疲労破壊

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    正解:2)

    写真を見ると鉄筋が露出しているのが確認できる.鉄筋が腐食により膨張し,かぶりコンクリートが剥離したものと考えられる.

    (45)下に示す鋼鉄道橋の写真から読み取れる事項として不適当なものはどれか.

    1) 上路プレートガーダーと呼ばれる形式である.

    2) リベット構造である.

    3) 主桁上フランジ上面は,ほぼ塗膜が消失している.

    4) 橋上にレールジョイントがある.

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    正解:1)

    レール走行面が主桁上フランジより下側にあり,下路プレートガーダーである.

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(8)

    (36)面外ガセット溶接部の疲労強度向上を目的に行う溶接部の仕上げ状態について,適当な組合せはどれか.

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    正解:2)

    A) 不適切な仕上げ状態(止端部未処理)

    B) 適切な仕上げ状態(バーグラインダー)

    C) 不適切な仕上げ状態(溶接止端の残存)

    (37)ルートき裂と止端き裂に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) すみ肉溶接で接合された荷重伝達型の十字溶接継手では,止端き裂とルートき裂が共に発生する可能性がある.

    2) 止端き裂は溶接内部で進展するため,ある程度の長さの表面き裂として発見される場合がある.

    3) 止端き裂に対する疲労強度向上対策として,ピーニング等で表面付近に圧縮残留応力を導入する方法がある.

    4) ルートき裂に対する疲労強度向上対策として,増し溶接でのど厚を増やす方法があるが,既存構造物ですでに内在き裂が存在するとその進展を止めることは難しい.

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    正解:2)

    止端き裂(溶接止端付近のき裂)は通常、溶接の止端(溶接ビードの端部)での応力集中や不良形状・欠陥から表面近傍で発生・進展する表面き裂であり、「溶接内部で進展する」とする記述は誤りです。内部に始まる場合もまれにあり得ますが、止端き裂の典型的挙動は表面発生→表面進展で、検査で比較的発見されやすいタイプです。

    (38)変形した部材の加熱矯正に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 150~400℃での矯正作業を避けるように温度管理する必要がある.

    2) 加熱終了後,荷重を負担させてよい温度は,約 250℃以下である.

    3) 加熱終了後,水をかけるなどして,急激に冷却するのがよい.

    4) 変形の大きい箇所から始めて,小さい箇所に向かって矯正を進める.

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    正解:3)

    加熱矯正後に水で急冷すると,熱衝撃・急激な残留応力発生や焼入れによる脆化・割れ(特に溶接部周辺や内在水素がある場合の水素割れ)を引き起こす危険があるため避けるのが普通です。通常は空冷や徐冷、あるいは制御冷却でゆっくり温度を下げます。

    補足:

    • 1)(150〜400℃を避ける)や 2)(荷重を負担させてよい温度は約250℃以下)は実務上の注意点で妥当です。
    • 4)(大きい変形箇所から)は矯正効果を考えると一般的に適切な手順です。

    (39)下の写真に示すトラス橋の下横構ガセットプレートに変形が生じた原因として,もっとも適当なものはどれか.

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    正解:1)

    1) ガセットプレートが大きく変形していることから, 設計で想定した以上の水平荷重 (地震)が作用したものと考えられる.

    2) 走行荷重による疲労では,溶接部のき裂などの発生は考えられるが,ガセットプレートの局部座屈のような現象は発生しないと考えられる.

    3) 塗膜が部分的に剥離しているが,腐食面は見られず,腐食ではない.

    4) 塗膜に燃焼の跡が見られないことから,火災ではないと思われる.

    (40)コンクリート構造物の補修・補強に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 電気化学的脱塩工法は,塩分吸着剤を含んだ溶液をコンクリート中に浸透させ,コンクリート中の鉄筋周辺の塩分を除去する工法である.

    2) 電気防食工法を適用する際は,コンクリートが湿潤している必要があり,大気中に存在する部材には適用が困難である.

    3) 断面修復を行う際は, 既設のコンクリートに含まれる塩化物イオンを極力除去する必要がある.

    4) ASR により性能低下した場合の補修・補強として,FRP や鋼板による巻き立ては部材の体積膨張を拘束するため,用いてはならない.

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    正解:3)

    1) 電気化学的脱塩(Electrochemical chloride extraction)は、鉄筋に電気を流すことで、かぶり部分の塩化物イオン濃度を下げる工法です。
    2) 電気防食(Cathodic protection)は湿潤条件での伝導性や酸素供給の影響を受けやすく、湿潤/乾燥状態で挙動が変わるため施工時や管理に注意が必要だが、「大気中の部材には適用が困難である」と断定するのは誤りです。大気中の構造物にも方式を選べば適用可能な場合が多く、環境に合わせて方式選定・施工管理を行います。
    3) 断面修復の際に既設コンクリートに含まれる塩化物イオンをできる限り除去することは、鉄筋腐食の再発防止のため重要であり、補修設計上の基本的な考え方です.
    4) ASR(アルカリシリカ反応)で劣化した部材に対しては、FRP や鋼板の巻立て(拘束)を用いて耐荷力や変形性能を改善したり膨張を拘束する対策が実際に用いられており,「用いてはならない」とするのは誤りです(ただし効果や副作用の検討が必要)。 

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(7)

    (31)腐食に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 直射日光が当たる箇所と当たらない箇所では,塗膜の劣化状況が異なる.

    2) 付着した塩分は腐食反応により消費されることはないため,腐食が継続される.

    3) ステンレス鋼では局部腐食は発生しない.

    4) 局部腐食はアノード位置が固定されるため,その速度は全面腐食に比べて著しく速い.

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    正解:3)

    ステンレス鋼でも塩素イオンなどによるピット(点食)や隙間腐食などの局部腐食は発生する。従って「発生しない」は誤りです。その他の選択肢は妥当です(1:日光で塗膜劣化が異なる、2:塩分は消費されず腐食を持続、4:局部腐食は小さなアノードで電流密度が高く進行が速い)。

    (32)塗替塗装時の素地調整に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 素地調整の目的は,鋼材表面さびや付着している有害物質を除去するとともに,層間付着性をよくすることである.

    2) 素地調整程度は 1 種から 4 種の 4 段階に区分されており,1 種は手工具を用いた簡便な方法,4 種はブラスト法である.

    3) 鋼鉄道橋ではブラストを行うことが基本である一方,鋼道路橋では健全な活膜を残して塗替えることが基本である.

    4) 塗膜の品質が十分であれば,素地調整の品質が塗膜の耐久性に及ぼす影響は小さい.

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    正解:1)

    1. 適当
      素地調整の目的はまさに「さびや付着物(旧塗膜の劣化物・塩分・油分など)の除去」と「新旧塗膜の層間付着性の確保」です。正しい記述。
    2. 誤り
      素地調整の区分(1種~4種)はJIS規格や土木学会規準に基づき、
    • 1種:全面ブラスト
    • 2種:部分ブラストまたは動力工具+全面的に除錆
    • 3種:動力工具などによる部分除錆
    • 4種:手工具・ワイヤブラシ等による簡易除錆
      なので、記述は逆になっています。
    1. 誤り
    • 鋼鉄道橋:全面ブラストによる塗替えが原則。
    • 鋼道路橋:旧塗膜が健全なら活膜を活かした塗替えを行うのが基本。
      記述は「鉄道橋=ブラスト」「道路橋=活膜残し」で一見正しそうですが、道路橋でも劣化が激しい場合は全面ブラストも行われるため、「基本である」と断定するのは誤りとされます。
    1. 誤り
      素地調整の品質は塗膜の耐久性に大きく影響します。塗膜性能が高くても素地調整が不十分だと密着不良や早期剥離が発生します。

    (33)疲労に関する a)~c)の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) 応力繰返し数と応力範囲の関係が疲労設計曲線を上回れば必ず疲労き裂が発生する.

    b) 一般に疲労き裂の進展速度はき裂寸法が増すに従い加速し,途中で停止することはない.

    c) 限界き裂寸法とはき裂の進展が停止する限界値である.

    1) なし

    2) 1 つ

    3) 2 つ

    4) 3 つ

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    正解:1)

    a) 応力繰返し数と応力範囲の関係が疲労設計曲線を上回れば必ず疲労き裂が発生する.

    • 疲労設計曲線(S-N 曲線)は「安全側に見込んだ基準」であり,必ずしもき裂が発生するわけではありません。

    • 「発生する可能性が高い」と言うのが正確。

    不適当

    b) 一般に疲労き裂の進展速度はき裂寸法が増すに従い加速し,途中で停止することはない.

    • き裂発生初期は,き裂の進展速度は小さいが,き裂が大きくなるに従い,一般的に進展速度が非常に大きくなる。

    • ただし,き裂によっては,き裂の進展に伴い,作用応力の低下や残留応力の解放等の影響により,き裂進展速度が小さくなり,最終的に進展が止まる場合もある.

    不適当

    c) 限界き裂寸法とはき裂の進展が停止する限界値である.

    • 限界き裂寸法 = 構造物が破壊に至る臨界寸法(破壊靭性で決まる)。

    • 「進展が停止する寸法」ではなく「進展すると破壊する寸法」。

    不適当

    (34)溶接構造物の疲労耐久性に影響する因子として,不適当なものはどれか.

    1) 活荷重の増大

    2) 風による部材の振動の発生

    3) 溶接品質

    4) 引張強さの低い鋼材の使用

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    正解:4)

    1) 活荷重の増大

    • 荷重が増えれば応力範囲が大きくなり,疲労耐久性は低下する。
      → 影響する(適当)

    2) 風による部材の振動の発生

    • 繰返し荷重・振動は疲労の主要因。
      → 影響する(適当)

    3) 溶接品質

    • 欠陥・止端形状などは疲労寿命に直結。
      → 影響する(適当)

    4) 引張強さの低い鋼材の使用

    • 鋼材の疲労強度は「母材の引張強さ」に依存せず,溶接部の応力集中や欠陥で決まる。
    • 一般に高強度鋼を使っても溶接継手の疲労強度はあまり向上しない。
      → 疲労耐久性に直接の影響は小さい → 不適当

    (35)下の図に示す溶接継手(止端非仕上げとする)を疲労強度等級の高い順に並べた場合に,適当なものはどれか.

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    正解:4)

    各継手の強度等級と 200 万回基本疲労強度Δσfは,以下のとおりである.

    継手A 強度等級G,Δσf =50N/mm2

    継手 B 強度等級 E,Δσf =80N/mm2

    継手 C 強度等級 H‘,Δσf =32N/mm2

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(6)

    (26)下図に示す鋼 I 桁の面外ガセット部のまわし溶接止端部の応力のうち,適当な組合せはどれか.

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    正解:4)

    • a) 公称応力(桁全体の応力分布を反映)
    • b) 構造的応力集中 → 溶接止端部近傍で応力が増大(ホットスポット応力に対応)
    • c) 溶接ビードの形状に依存する局所的な応力集中

    したがって、

    • 公称応力 → a)
    • ホットスポット応力 → b)

    (27)下の写真 a)~c)の試験により得られる測定結果として,適当な組合せはどれか.

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    正解:3)

    a)コンクリートコアに液体を吹きかけている写真であり,コンクリートコアが一部変色している。これは,コンクリートコアにフェノールフタレイン溶液を吹きかけ,中性化深さを測定している写真である。

    b)採取したコンクリートコアにチップを取り付け,長さを測定している。これは,ASR促進膨張試験で初期値を測定し, 促進養生条件下でコアを養生し,膨張量を測定する.写真はそのコアの膨張量の測定状況である.

    c)写真は,プローブにエンコーダ(移動軌跡計測)機能を有する鉄筋探査装置により,鉄筋径,鉄筋位置,かぶり厚を計測している様子である.

    (28)アーチ橋において, 下図に示すように, さや管とシース管に覆われたハンガー材(PC 鋼棒)に破断が生じた.要因として考えられる腐食形態のうち,もっとも適当なものはどれか.

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    正解:1)

    • 図・写真の構造では、ステンレス製のさや管/シース管と内部のPC鋼棒(普通鋼)が近接・接触しており、そこに滞水が溜まって電解質環境が形成されています。

    • ステンレスは貴な金属で、炭素鋼(PC鋼棒)が陰極側に対して陽極となりやすく、電位差により腐食が進行します。

    • 写真のように鋼棒側が局所的に著しく腐食(細くなっている)しているのは、異種金属接触による犠牲的腐食の典型像です。

    補足:滞水による隙間腐食(3)や局所環境による影響も併発することはありますが、主因として最も適切なのは異種金属接触腐食です。

    (29)防食に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 有害物質を含む塗膜の塗替塗装時に,塗膜はく離剤の使用前にブラスト作業を行った.

    2) はく離塗膜に鉛,クロムが含まれていたことから一般産業廃棄物として処分した.

    3) 金属溶射された部材の運搬時,広範囲で鋼素地が露出した損傷が発生したことからジンクリッチペイントにより補修した.

    4) 排水措置により腐食要因を排除したのち,塩害の可能性と現地のさびの状態から耐候性鋼を無塗装のまま使用すると判断した.

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    正解:3)

    1. 誤り — 有害塗膜(鉛・クロム等)を含む場合は、まず飛散や曝露を防ぐためはく離剤や封じ込め等の化学的/局所的手法で処理するか、適切な集塵・封止を行ったうえでブラストを行うべきで、単にブラストを先に行うのは安全・環境面で不適切です。
    2. 誤り — はく離した鉛や六価クロム等を含む塗膜は一般産業廃棄物ではなく、有害性に応じた特別管理(有害産業廃棄物)扱いで適正に処分・処理する必要があります。
    3. 正しい — 金属溶射(たとえば亜鉛溶射)による被覆が損傷して鋼素地が広範に露出した場合、現場での一次的/応急的補修として**ジンクリッチペイント(亜鉛含有の補修塗料)**を用いるのは一般的で有効です(ただし下地処理や塗布厚、施工方法など適切に行うことが前提)。広域で恒久的な復旧が必要なら溶射の再施工等を検討します。
    4. 誤り — 塩害可能性がある場所では耐候性鋼でも無塗装の放置は推奨されません。塩分がある環境では耐候鋼の被膜(patina)形成が妨げられるため、塗装や防錆対策が必要になる場合が多いです。

    (30)腐食部材の当て板補修に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 腐食部分の断面は欠損断面とし,当て板により不足断面を補った.

    2) 腐食部分の素地調整は,板厚の減少を防ぐため動力工具を使用せず水洗により行った.

    3) 当て板の角部や高力ボルト部での腐食を防止するため,当て板角部の面取りやトルシア型高力ボルトのピンテール破断部の仕上げを行った.

    4) 補修部の防水のため,接触面の凹凸を不陸修正材で処理したうえで当て板周りのシールを行った.

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    正解:2)

    腐食部の下地処理は除錆が最重要で、水洗だけでは十分に腐食物や付着物を除去できないため不適当。通常は研掃やサンドブラストなどの機械的・物理的除錆を適切に行い、必要に応じて部分的に動力工具を用いて板厚や周辺を保護しつつ確実に素地を出すことが求められます。

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(5)

    (21)下図に示すように,全ての軸重が同じである車両が支間 20.0m の単純桁上をゆっくりと通過した場合の支点 b の支点反力の時刻歴波形として,もっとも適当なものはどれか.

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    正解:3)

    支点 B の反力の特徴は,輪重が近接すると大きくなり,輪重の通過直後に急激に減少することである.そのことに着目して反力の時刻歴波形を眺めるとよい.

    (22)ひずみゲージを用いたひずみ測定に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 応力勾配を求めるため,応力集中ゲージを用いた.

    2) 主応力とその方向を把握するため,3 軸ロゼットゲージを使用した.

    3) 板の表裏でひずみを測定し,その平均値より面外曲げ応力を求めた.

    4) 応力頻度の評価のために,動ひずみ測定を行った.

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    正解:3)

    板の表裏でのひずみ測定において,表裏の平均ひずみは膜ひずみに相当し,面外曲げ(曲げひずみ)は表裏の差(=半分に割る等の処理)から求めるのが正しい。したがって「平均値より面外曲げ応力を求めた」は不適当。

    他は妥当:2はロゼットで主応力算出、4は動的な応力頻度評価に動ひずみ計が使われる、1は応力勾配評価に局所ゲージを用いる手法があるため一般に妥当。

    (23)フェーズドアレイ探傷に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) フェーズドアレイ探傷は放射線透過試験の一種である.

    2) フェーズドアレイ探傷では複数の素子から送信するタイミングを制御する.

    3) 超音波を 1 点に集束させることをスキャンという.

    4) フェーズドアレイ探傷は鋼材面を目視で確認することで欠陥を検出する.

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    正解:2)

    1. 「フェーズドアレイ探傷は放射線透過試験の一種である」
      → ✖ 不適当
      フェーズドアレイ探傷は超音波探傷(UT: Ultrasonic Testing)の一種であり、放射線(X線やγ線)を使う試験ではありません。
    2. 「フェーズドアレイ探傷では複数の素子から送信するタイミングを制御する」
      → 〇 適当
      フェーズドアレイ探傷では、複数の超音波素子(ピエゾ素子)を持つプローブで、各素子の送信タイミングを電子的に制御することで、ビームの方向や焦点を自由に変えられます。これがフェーズドアレイの特徴です。
    3. 「超音波を1点に集束させることをスキャンという」
      → ✖ 不適当
      超音波を1点に集束させるのはフォーカス(集束)です。
      スキャンは、試験対象を走査して広い範囲を探傷することを指します。
    4. 「フェーズドアレイ探傷は鋼材面を目視で確認することで欠陥を検出する」
      → ✖ 不適当
      これは目視検査(VT: Visual Testing)の説明であり、超音波探傷では内部欠陥を音波で検出します。

    (24)鋼構造物の腐食・防食に対する調査方法に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) さびに覆われた鋼板の板厚を超音波厚さ計で測定する場合には,接触媒質を多く塗布することでさび厚の影響を取り除くことができる.

    2) ワッペン式暴露試験は,試験片を対象鋼構造物に設置・暴露して,経年による腐食減耗量を試験片中央部の板厚変化から求める試験である.

    3) ガーゼにより拭き取り塩素イオン検知管を用いて測定する方法は,無機ジンクリッチペイント塗布面やさび面での塩分測定に適している.

    4) 碁盤目・クロスカットテープ付着試験は,現場で塗膜の付着性を評価する方法として利用される.

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    正解:4)

    1. 誤り:超音波厚さ計はさびやスケールがあると音波が散乱・減衰して測定誤差が大きくなります。接触媒質(カプラント)を多く塗っても“さび厚の影響”は除去できません。通常は測定点を研掃して金属光沢を出してから測ります。
    2. 誤り:「ワッペン式暴露試験」は対象部材に小片(クーポン)を貼り付けて所定期間暴露し、質量減少(単位面積あたりの重量減)から腐食減耗量を求めるのが基本です。記述のように「中央部の板厚変化のみ」で求める試験ではありません。
    3. 誤り:ガーゼ拭き取り+塩素イオン検知管法は主に平滑な塗装面での表面塩分の簡易測定に適します。無機ジンクリッチ塗膜やさび面のように粗く多孔質な面では回収率が不安定になりやすく、ブレスル法(パッチ法)などの方が適しています。
    4. 正しい:碁盤目・クロスカットテープ付着試験は現場でも実施できる代表的な塗膜付着性評価法(JIS/ISO)で、現場調査で広く用いられます。

    (25)非破壊試験に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 極間法の磁粉探傷試験は,表面き裂の方向に平行する磁束を与えることが重要である.

    2) 浸透探傷試験は,表面き裂の幅を精度良く把握することができる.

    3) 渦流探傷試験は,表面き裂に対して塗膜を除去することなく探傷することができる.

    4) 超音波探傷試験は,欠陥からの反射エコー高さから欠陥位置を推定することができる.

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    正解:3)

    1) 極間法の磁粉探傷試験は,表面き裂の方向に平行する磁束を与えることが重要である.

    → 誤り。磁粉探傷では、き裂に直交するように磁束を与えることで漏洩磁束が生じ、欠陥が検出しやすくなります。平行では見つかりにくいです。

    2) 浸透探傷試験は,表面き裂の幅を精度良く把握することができる.

    → 誤り。浸透探傷試験は、表面に開口しているき裂や欠陥の存在や位置は分かりますが、幅や深さの定量的把握はできません。

    3) 渦流探傷試験は,表面き裂に対して塗膜を除去することなく探傷することができる.

    → 正しい。渦流探傷は電磁誘導を利用するため、通常の塗膜や薄い被覆を除去せずに探傷できます(ただし厚い被覆や非導電性材料によっては影響を受けます)。

    4) 超音波探傷試験は,欠陥からの反射エコー高さから欠陥位置を推定することができる.

    → 誤り。欠陥位置は超音波の伝播時間(エコーの出現位置)から求めます。エコー高さは主に欠陥の大きさや形状、反射率の指標です。

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(4)

    (16)高力ボルトに関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) F10T の設計ボルト軸力は, ボルト材料の引張強さの 75%となる応力を基準としている.

    2) 高力ボルトに導入された軸力は,締付け直後に 2~3%増加し,その後時間の経過とともに少しずつ増加する.

    3) 摩擦接合継手の摩擦面のすべり係数は,表面処理の状態によらず 0.45 を確保できる.

    4) 継手の作用力方向に配置されるボルト本数が多いほど,各ボルトに作用する力が不均等になる.

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    正解:4)

    • 1) 正しい。高力ボルト(例えば F10T 等)の設計における基準軸力は、ボルト材料の引張強さ(又は規格強さ)に対しておおむね 0.7〜0.75 程度の応力を基準にする取り扱いがされており、記述は妥当。
    • 2) 誤り。締付け直後は締付けトルクや座面のかみ合わせで軸力はむしろ低下(初期座屈・ゆるみ)する方向に変化することが多く、時間とともに増加するというのは逆。
    • 3) 誤り。摩擦係数は 表面処理・清浄度・めっきの有無等に大きく依存し、常に 0.45 を確保できるわけではない。
    • 4) 誤り。継手に配置するボルト数が多いほど一般に荷重はより分散される(均等化が期待される)が,配置や剛性差によっては不均等分担となる場合もあるため、単純に「多いほど不均等になる」は不適当。

    (17)下図に示す柱 A,B について,それぞれの弾性座屈荷重を P crA ,P crBとしたとき,P crA /P crB の値として,適当なものはどれか.ただし,柱 A は長さ 2Lで両端単純支持,柱 B は長さLで一端固定,他端自由,柱は均質で等断面とする.

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    正解:3)

    弾性座屈荷重は,下式で定義される.

    ここで,E :ヤング係数

    I :断面2次モーメント

    l:有効座屈長

    柱 A の有効座屈長は 2L であり,柱 B の有効座屈長も 2L となる.そのため,柱 A の弾性座屈荷重と柱 B の弾性座屈荷重は同じとなる.

    (18)コンクリートに関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 水セメント比が大きいほど,強度と耐久性は向上する.

    2) 粗骨材寸法が大きいほど,乾燥収縮やクリープが小さくなる.

    3) スランプが大きいほど,材料分離が生じやすく,乾燥収縮も大きくなる.

    4) 空気量が多いほど,強度は低下する.

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    正解:1)

    • 1) 誤り。水セメント比が大きい(=水が多い)ほど、コンクリートは強度・耐久性ともに低下する。水セメント比を小さくするほど緻密になり、強度・耐久性が向上する。
    • 2) 正しい。粗骨材寸法が大きいと、セメントペースト量が相対的に減り、乾燥収縮やクリープが小さくなる傾向がある。
    • 3) 正しい。スランプが大きい(=流動性が高い)と、水量が多くなりやすく、材料分離や乾燥収縮の増大につながる。
    • 4) 正しい。空気量が多いと、強度は低下する。ただし、凍害抵抗性の点では有効。

    (19)定期点検に関する a)~d)の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) 道路橋では,5 年に 1 回の頻度で定期点検を行うことを基本としている.

    b) 鉄道橋では,2 年に 1 回の頻度で定期点検(通常全般検査)を行うことを基本としている.

    c) 港湾構造物では,干満の影響を受ける場合については,低潮位時に行うのが一般的である.

    d) 水力発電関連構造物では,非出水期に行う.

    1) 1 つ

    2) 2 つ

    3) 3 つ

    4) 4 つ

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    正解:4)

    a) 道路橋

    • 「道路橋定期点検要領」(国交省)では 5年に1回 が基本。

    ✅ 正しい。

    b) 鉄道橋

    • 鉄道構造物の検査は、国交省「鉄道に関する技術基準」や各鉄道会社の基準に基づき、通常全般検査は2年に1回が原則。

    ✅ 正しい。

    c) 港湾構造物

    • 港湾施設の点検要領では、干満差がある場合は低潮位時に点検するのが基本

    ✅ 正しい。

    d) 水力発電関連構造物

    • 水力発電施設では、洪水期を避けた非出水期に点検するのが基本。

    ✅ 正しい。

    (20)点検,診断に関する次のうち記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 点検済みの類似構造物が近接していたので,対象構造物の点検を省略した.

    2) 損傷等が構造物や第三者の安全に影響を与える可能性があったので,安全を確保するための緊急対策を実施した.

    3) 初回点検として,定期点検と同等の点検を行った.

    4) 点検で提示された損傷ランクについて,判定会議を開催し,再度損傷ランクを検討した.

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    正解:1)

    1) 点検済みの類似構造物が近接していたので,対象構造物の点検を省略した.

    • 点検は原則として 全ての対象構造物ごとに実施が必要。類似構造物があっても省略は不可。
      ❌ 不適当。

    2) 損傷等が構造物や第三者の安全に影響を与える可能性があったので,安全を確保するための緊急対策を実施した.

    • 緊急対策は正しい対応。
      ✅ 適当。

    3) 初回点検として,定期点検と同等の点検を行った.

    • 初回点検は原則として定期点検相当を実施。
      ✅ 適当。

    4) 点検で提示された損傷ランクについて,判定会議を開催し,再度損傷ランクを検討した.

    • 判定会議でランクを検討するのは正しい流れ。
      ✅ 適当。
  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(3)

    (11)溶接法の特徴に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) マグ溶接:溶着効率は高いが,風の影響を受けやすい.

    2) セルフシールド溶接:風の影響を受けにくいが,機械的性質は劣る.

    3) サブマージアーク溶接:複雑な形状への適用は容易であり,作業効率に優れる.

    4) 被覆アーク溶接:全姿勢での溶接が可能である.

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    正解:3)

    1) マグ溶接

    • ガスシールド方式なので、確かに 風の影響を受けやすい。
    • 溶着効率も高い。
      ➡️ 正しい。

    2) セルフシールド溶接

    • シールドガスを使わないので 風の影響を受けにくい。
    • ただし、一般に機械的性質はやや劣る。
      ➡️ 正しい。

    3) サブマージアーク溶接

    • フラックスでアークを覆うため高能率・高品質。
    • ただし、自動溶接で直線や大径円周など単純形状に適するが、複雑な形状には不向き。
      ➡️ 「複雑な形状への適用は容易」という記述は誤り。

    4) 被覆アーク溶接

    • 全姿勢で施工可能(上向き・立向きも可能)。
      ➡️ 正しい。

    (12)溶接の熱影響部に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 熱影響部の大きさに関係の深い溶接入熱は,アーク電圧,溶接電流,溶接速度に比例して大きくなる.

    2) 熱影響部は最高硬さが上昇するため,引張強さは大きくなり,絞りや伸びは低下する傾向にある.

    3) 多層溶接の場合, l パス溶接に比べて熱影響部の最高硬さが低くなる傾向がある.

    4) 熱影響部の最高硬さは,母材の炭素当量 Ceq が大きいほど上昇する.

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    正解:1)

    (13)次のア)~エ)の溶接欠陥と A~D に示す欠陥の説明のうち,適当な組合せはどれか.

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    正解:3)

    A:アンダカット

    B:オーバラップ

    C:溶け込み不良

    D:気孔(ブローホール)

    (14)高力ボルトに関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 現在の JIS では,摩擦接合用高力六角ボルトとして F10T と F8T が規定されている.

    2) トルシア形高力ボルトは,支圧接合用として用いられる.

    3) 耐候性鋼橋の高力ボルト継手には,耐候性高力ボルトを使用する.

    4) F11T や F13T でみられる遅れ破壊は,水素脆化によって引き起こされる.

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    正解:2)

    • 1) 正しい。JIS では摩擦接合用高力六角ボルトとして F8T, F10T が規定されている。
    • 2) 誤り。トルシア形高力ボルトは摩擦接合用として用いられるものであり、支圧接合専用ではない。
    • 3) 正しい。耐候性鋼橋には、さびに強い 耐候性高力ボルト が使われる。
    • 4) 正しい。高強度の F11T, F13T などでは 水素脆化による遅れ破壊が問題になる。

    (15)リベット接合に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 現場継手では,平成 10 年頃までリベット接合が主流であった.

    2) リベット構造の桁では,疲労き裂が生じない.

    3) リベット接合は,軸部のせん断抵抗と接合材の支圧力により応力を伝達する.

    4) リベット継手の部材間には防錆の目的で有機ジンクリッチペイントが塗布されている.

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    正解:3)

    • 3)正しい。 リベット接合は、リベット軸部でのせん断抵抗と、リベット軸と穴の接触による支圧で力を伝達する。

    他は不適当

    • 1)誤り。 リベットはもっと早い時期(20世紀中頃)から段階的に高力ボルトや溶接に置き換わり、1998年(平成10年)まで「主流」であったとは言えない。
    • 2)誤り。 リベット構造でもリベット孔まわりや継手部に疲労き裂は生じる。
    • 4)誤り。 継手部の防錆処理は用途・時代で異なるが、接合面に有機ジンクリッチだけを必ず塗布する、という一般則はない(むしろ接触腐食や塗膜のはく離を避ける配慮が必要)。
  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(2)

    (6)鋼材の製法および性質に関する次の記述のうち,適当なものはどれか.

    1) 現在の鋼材の製造法には,大きく分けて高炉法と電炉法があり,高品質な鋼材は主として電炉法により製造されている.

    2) 低温用鋼や耐ラメラテア鋼製造の要請や連続鋳造法の導入によって,鋼材における硫黄含有量が急激に減少した.

    3) ステンレス鋼は,初期さびの生成抑制や緻密なさび層の生成促進を目的として開発され,さび安定化補助処理が併用される場合もある.

    4) TMCP とは,結晶粒の粗粒化により良好な溶接性を有する鋼板が製造可能な技術である.

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    正解:2)

    1) 現在の鋼材の製造法には,大きく分けて高炉法と電炉法があり,高品質な鋼材は主として高炉法により製造されている.

    2) 低温用鋼や耐ラメラテア鋼製造の要請や連続鋳造法の導入によって,鋼材における硫黄含有量が急激に減少した.

    3) 耐候性鋼耐候性鋼では,その表面に緻密なさび層が形成されるまでの期間は普通鋼材と同様にさび汁が生じるため,初期さびの生成抑制や緻密なさび層の生成促進を目的として開発されたさび安定化補助処理が併用される場合もある.

    4) TMCP とは,熱加工制御(Thermo-Mechanical Control Process) の略であり,鋼板製造時におけるスラブ加熱から圧延.冷却の各工程を一貫して冶金的に制御する製造技術で,良好な溶接性を有する鋼板が製造可能な技術である.

    (7)下図に示す単純はりの支間中央断面(A 断面)における下縁応力として,適当なものはどれか。

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    正解:4)

    (8)外面塗装に関する次の記述のうち,もっとも適当なものはどれか.

    1) ふっ素樹脂塗装は,白亜化しやすく,耐候性が低い.

    2) エポキシ樹脂塗装は,速乾性は高いが,耐水性・付着性が低い.

    3) 厚膜型無機ジンクリッチペイントは,塗膜厚を 75μm 程度とするのが一般的である.

    4) 有機ジンクリッチペイントは,無機ジンクリッチペイントと比べ防錆性が高い.

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    正解:3)

    1. ふっ素樹脂塗装は白亜化しやすく、耐候性が低い。
      → 誤り。ふっ素樹脂塗装は 白亜化しにくく、非常に耐候性が高い のが特徴です。
    2. エポキシ樹脂塗装は速乾性は高いが、耐水性・付着性が低い。
      → 誤り。エポキシはむしろ 耐水性・付着性が優れるが、紫外線に弱い(白亜化しやすい) のが特徴です。
    3. 厚膜型無機ジンクリッチペイントは、塗膜厚を 75μm 程度とするのが一般的である。
      → 正しい。厚膜型無機ジンクは一般に 60〜80μm程度 が標準で、75μmは妥当な値です。
    4. 有機ジンクリッチペイントは、無機ジンクリッチペイントと比べ防錆性が高い。
      → 誤り。防錆性は 無機ジンクリッチの方が高い(犠牲防食作用が強い)。

    (9)金属溶射,めっきに関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) 溶融亜鉛めっき層に傷がつくと,亜鉛が溶出し,犠牲防食作用により鋼材の腐食が抑制される.

    2) 溶融亜鉛めっきは,溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきよりも耐食性に優れる.

    3) 金属溶射,溶融亜鉛めっきのいずれも,重防食塗装の防食下地として用いることができる.

    4) 金属溶射は,溶融亜鉛めっきと比較して熱影響が少なく,熱によるひずみが生じにくい.

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    正解:2)

    1. 正しい。亜鉛は犠牲陽極として働き、傷部でも亜鉛が先に腐食して鋼材を保護する。
    2. 不適当。一般に 亜鉛-アルミニウム合金めっき(例:Galvalume、Galfan 等)は純亜鉛めっきより耐食性が優れる。したがって2は誤り。
    3. 正しい。金属溶射も溶融亜鉛めっきも、重防食塗装の下地(防食層)として利用できる。
    4. 正しい。金属溶射は基材への総熱入力が比較的小さく、溶融めっき(高温浴への浸漬)に比べて熱変形・ひずみが生じにくい。

    (10)下図に示すヒンジを有するはりの A 点の曲げモーメントとして,適当なものはどれか.

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    正解:1)

  • 土木鋼構造診断士・補 過去問2023年択一問題(1)

    (1)材料の歴史や損傷事例に関する a)~d)の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) 鉄系材料の開発は,鋳鉄→錬鉄→鋼の順に進んだ.

    b) 東京ゲートブリッジにおいて,溶接性を向上させた SBHS 鋼材が採用された.

    c) 国道 23 号木曽川大橋において,疲労き裂がおよそ lm まで達した時点で初めて発見された.

    d) タコマ・ナロウズ橋において,風によるねじれ振動が生じ,崩壊した.

    1) なし

    2) 1 つ

    3) 2 つ

    4) 3 つ

    解答はここをクリック

    正解:4)

    • a) 正しい。歴史的には鋳鉄(cast iron)→錬鉄(wrought iron)→鋼(steel) の流れ。
    • b) 正しい。東京ゲートブリッジでは溶接性・靱性を高めたSBHS鋼材が採用。
    • c) 誤り。木曽川大橋の斜材の破断は、斜材が路面貫通部における腐食により発生したものである。疲労き裂が 1m まで達した時点で発見されたものではない。
    • d) 正しい。タコマ・ナロウズ橋は風によるねじれ(捩り)振動が成長し崩壊。

    (2)矩形断面の片持ちばりの自由端 (右端) に水平方向成分と鉛直方向成分を有する集中荷重 Pが作用しているとき,荷重の作用点から十分に離れた断面における鉛直方向の直応力分布として,もっとも適当なものはどれか.

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    正解:1)

    考え方

    • 荷重 P には 水平成分と鉛直成分がある。
    • 水平成分 → せん断応力が主。
    • 鉛直成分 → 片持ちばりを鉛直に曲げるモーメントを発生させる。
    • 曲げモーメントによる鉛直応力は、断面において
      • 上側:圧縮
      • 下側:引張
    • しかもその分布は「線形(直線的)」。

    選択肢確認

    1. 上が圧縮、下が引張、直線分布 → ✅ 正しい
    2. 半円状の分布 → ❌ 曲げ応力分布とは異なる
    3. ジグザグ分布 → ❌ こんな応力分布は生じない
    4. 上下とも圧縮 → ❌ 曲げではありえない(軸力ならある)

    (3)鋼材の性質が不明な鋼構造物に関する次の記述のうち,もっとも不適当なものはどれか.

    1) 成分分析により算定した Ceq,PCM の値に基づき,溶接補修可能な鋼材であると判断した。

    2) 溶接性が不明なので,高力ボルトで当て板補修した.

    3) 1870 年頃に製作されたことから,錬鉄製であると推定した.

    4) 引張試験に基づき,鋼材の降伏点を確認した.

    解答はここをクリック

    正解:3)

    • 1) 成分分析から Ceq・PCM を算出して溶接性を評価するのは適切。
    • 2) 溶接性が不明な場合に、当て板+高力ボルトで補修するのも妥当。
    • 3) 製作年代(1870年頃)だけで錬鉄と断定するのは不適切。年代は参考情報に過ぎず、実材調査(成分・金属組織・試験)なしに材質を決め打ちするのは危険。
    • 4) 引張試験で降伏点を確認するのは適切。

    (4)鋼材に関する a)~c)の記述のうち,適当なものはいくつか.

    a) SS400 材は,化学成分として P 量と S 量のみを規定している.

    b) SM490 材と SBHS400 材では,JIS における引張強さの規格下限値が同じである.

    c) SM490Y 材は,SM490 材に対して,溶接性を高めている.

    1) なし

    2) 1 つ

    3) 2 つ

    4) 3 つ

    解答はここをクリック

    正解:3)

    • a) 正:SS400(JIS G3101)は化学成分の規定が基本的に P・Sのみ(上限)で、他元素は機械的性質で管理。
    • b) 誤:SM490(JIS G3106)の引張強さ下限は約490 MPa。SBHS400(JIS G3140)は下限がより高い(約540 MPa)で同じではない。
    • c) 正:SM490YはSM490に対し溶接性を改善(Ceq/PCMを低減)したグレードで、溶接割れ感受性の低減を狙っている。

    (5)鋼材の性質を表す指標に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか.

    1) シャルピー吸収エネルギーは,冷間曲げ加工時の内側半径の許容値設定の指標として用いられている.

    2) 溶接時の予熱温度の管理指標として,溶接割れ感受性組成 PCM が用いられている.

    3) ビッカース硬さから,引張強さを推定することができる.

    4) 降伏点が明確に現れない場合は,全伸びが 0.8%時の耐力を降伏点相当の強度としている.

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    正解:4)

    説明:降伏点が明確でない場合の耐力(降伏相当値)は通常全伸び0.2%(0.2%耐力)を用いる。0.8%は誤りである。

    その他は妥当:PCMは溶接割れ対策・予熱管理に使われ、ビッカース硬さから引張強さの経験式で推定でき、シャルピー吸収エネルギーは低温脆性や曲げ時の許容性評価に利用される。