- (26)塗装の塗替えに関する次の記述のうち、適当なものはどれか。
1) 素地調整の程度は、1 種から 4 種に区分されており、1 種に近づくほど塗膜の除去程度が高くなる。
2) 鋼道路橋および鋼鉄道橋では、旧塗膜はブラストにより完全に除去するのが原則である。
3) 塗膜はく離剤は、さびの除去など鋼材面の素地調整に有効であるが、塗膜が厚いと素地に浸透しないため、事前にブラスト作業を行う必要がある。
4) 塗膜損傷部などで部分塗替えをする場合、 旧塗膜の上に新塗膜を塗り重ねると早期剥離が間題となるため、境界部については塗り重ねないのが原則である。
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正解:1)
1) ○
素地調整の程度は JIS 規格などで 1種(全面ブラスト)~4種(手工具による除去)に区分され、1種に近いほど塗膜・さびの除去程度が高い。これは正しい。
2) ×
道路橋や鉄道橋でも、経済性や環境負荷を考え、原則として健全な旧塗膜は活用し、全面ブラストで完全除去するのは特殊な場合。
3) ×
塗膜はく離剤は塗膜を軟化・膨潤させて剥がすもの。さびの除去には有効ではないし、厚膜でもブラスト前提という運用は通常行わない。
4) ×
部分塗替えでは旧塗膜に重ね塗りするのが基本。ただし境界部は段差を目立たなくするために必要に応じて「ケレン」を行ってから塗り重ねる。塗り重ねないのが原則、というのは誤り。
- (27)塗膜劣化、腐食の調査および評価に関する a)~c) の記述のうち、適当なものはいくつか。
a) 腐食環境調査として飛来塩分量を計測した。
b) 耐候性鋼の全表面がうろこ状さびに覆われていたことから保護性さびが形成されていると評価した。
c) さび、塗膜のはがれや割れ、膨れの発生程度などによって塗膜の健全性を評価した。
1) なし
2) 1 つ
3) 2 つ
4) 3 つ
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正解:3)
- a)○
飛来塩分量の計測は海岸環境などの腐食環境評価で重要。腐食速度や塗膜寿命の推定に役立つ。 - b)×
耐候性鋼に生じる保護さびは密着して均一で剥がれないものが望ましい。「うろこ状に覆われている」— すなわち剥離しやすい鱗状さびなら保護性さびとは言えない。 - c)○
さびの程度、塗膜の剥がれ・割れ・膨れなどは塗膜健全性評価の基本項目。
- (28)鋼材の腐食に関する a) ~d) の記述のうち、適当なものはいくつか。
a) コンクリートに埋め込まれた鋼部材は、地際部で腐食が進行することがある。
b) 普通鋼材をステンレスボルトで連結すると、異種金属接触腐食を生じることがある。
c) 鋼板の重ね合わせ部やボルト締付け面などの隙間内外で濃淡電池が形成され、隙間腐食を生じることがある。
d) 鋼材表面に塩分が付着すると、潮解作用により腐食の進行が促進されることがある。
1) 1 つ
2) 2 つ
3) 3 つ
4) 4 つ
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正解:4)
- a)○
コンクリート埋設部でも、地際やスプラッシュゾーンなど水分や塩分が集中する部位では塩害や炭酸化が進みやすく、腐食が進行することがある。 - b)○
異種金属の接触(普通鋼+ステンレス等)は電位差により腐食を生じ、普通鋼側が犠牲的に腐食する可能性がある。 - c)○
重ね部やボルト締付面の隙間では攪拌されにくく酸素濃淡電池が形成され、隙間腐食が起こりやすい。 - d)○
塩分が付着すると潮解により表面に電解質が形成され,腐食反応が促進される。
- (29)塗装の役割に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
1) 塩類、水、酸素などの腐食因子の侵入を遮断する。
2) アノード・カソード間の腐食電流を遮断する。
3) 鉄よりイオン化傾向の小さな材料で被覆して鉄の溶出を防止する。
4) 構造物の美観を保つ。
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正解:3)
- ○
塗膜はバリアとして働き,塩分・水分・酸素の侵入を抑制するのが基本的役割。 - ○
塗膜で金属表面を覆うことで,アノード・カソード間の電子のやりとり(腐食電流)を遮断できる。 - ×(不適当)
鉄よりイオン化傾向の小さい材料(貴な金属)で被覆すると,むしろ鉄がアノードになって腐食が促進される恐れがある(例:ステンレス被覆鋼でのガルバニック腐食)。犠牲防食としては鉄よりイオン化傾向の大きい亜鉛などを使う。 - ○
塗装は防食と並んで美観保持の機能も大きい。
- (30)腐食した鋼部材の補修・補強に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
1) 年代のわからない鋼材の溶接性をCeq、PCM の値に加えて P、S の含有量から判断した。
2) 摩擦係数の向上を期待して、腐食面の不陸を残し、高力ボルトで当て板を取り付けた。
3) 耐荷力に問題がなかったので、腐食原因を取り除いた上で再塗装と判断した。
4) 腐食が激しい部位の素地調整に、ブラストと水洗いを併用した。
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正解:2)
理由:摩擦接合(スリップクリティカル接合)では摩擦係数を確保するために、**指定された素地調整(通常はブラスト等で錆・汚れを完全に除去して平滑にする)**が必要です。腐食による不陸(凹凸)を残したまま高力ボルトで当て板を付けると、接触面が均一に締まらずクランプ力や有効摩擦面積が低下し、むしろ滑りや早期損傷の原因になります。
代替策としては、凹凸を除去する(ブラスト、面取り、修補材充填、必要なら当該部材の交換)してから所定の締め付けや当て板設置を行う、あるいは摩擦接合ではなく軸力やせん断を負担させる別の補強方式を検討する、などが適切です。